高齢化が叫ばれるようになって久しく、介護業界への注目は日に日に高まっています。これまで以上に介護職の需要が高まっていくことは間違いありません。介護業界は今後、成長していく領域であり、将来性のある分野だといえるでしょう。
介護職が明るい未来を迎えるために、どのような対策が進められているのか、改めて考えてみましょう。
人口の高齢化や介護職の人材不足などの問題を受けて、日本政府はさまざまな対策を検討しています。たとえば、介護報酬の処遇改善加算や、外国人介護士の登用、介護ロボット導入による労力の緩和など、介護従事者の労働をサポートする施策です。
中には、すでに実施されているものもあります。介護報酬では、職場環境改善などの算定要件を満たした施設・事業所に対し、最高で3万7千円相当の介護職員処遇改善加算の算定が規定されました。
2018年時点で、厚生労働省が調査した施設・事業所の9割以上が、この加算を受けるために必要な届出を済ませています。
さらに、おおむね勤続10年を超える介護福祉士を有する施設・事業所に対して、「介護職員等特定処遇改善加算」のルールが2019年10月より新設されました。これによって、加算を受ける条件として、事業所につき1人以上のベテラン職員に、月額8万円アップまたは年収440万円が保証されることになります。
このように「賃金の低さ」に対しては、国ぐるみでさまざまな対策が今後も実施されていくことが期待されます。
このほかに介護職にとって不安材料となっているのは、人材不足からくる仕事量の多さではないでしょうか。
給与面での改善は、もちろん人手不足の解消にもひと役買うでしょう。もう1つ、人材不足に対するサプリメントとして心強いのは、「定年後の第2のキャリア」として介護職への注目が集まっていることです。
高齢化によって、60〜65歳で現役をリタイアし、あとはのんびりした老後を過ごすというライフスタイルは、もう成り立たない社会になったといってよいでしょう。政府も就労期間の延伸を促す施策を打ち出し始めています。
管理職などの経験からリーダーシップや人をまとめることに長けた人や、自分の親の介護を経験した人が、その能力や経験を、定年後も継続して社会の中で発揮していこうとする機運は、長い人材不足にあえいできた介護業界にとって光明となることでしょう。
これから介護職の年齢層が上がっていくことや、気力があっても体力面で介護職を続けられなくなる人のことを考えると、体力面のサポートも考えていかなければなりません。
すでに始まっている取り組みとして、介護ロボットの導入を進めている施設もあります。
「パワーアシストスーツ」という、介護士が自分の体に装着して、その力を増強させるタイプのものが現場で使われ始めています。
厳重な管理体制が敷かれている工場などの作業ロボットは別として、倫理上の問題から、今のところ人型のロボットは人間よりも強い力をもつことができません。この問題がクリアされれば、移乗など力を要する介護場面をアシストするロボットが登場することも考えられます。
介護の仕事をしている人にとって何よりも必要なのは、介護職が社会の中でどのように見られているか、その見方が改善していくこと。つまり、「社会的地位の向上」にあるのではないかと思います。
その意味で、日本では今後、飛躍的に「介護」に対する需要が高まることは間違いありません。介護の専門職がいなければ成り立たない社会はすぐそこまで来ています。
そのような社会では、介護の仕事に対するイメージも大きく変わらざるを得ません。介護の現場が働きやすいものになる未来は、そう遠くないでしょう。
このほかにも、政府が進める「働き方改革」によって業務内容が見直されたり、ペーパーレス化が進められたり、介護職の業務も変わりつつあります。
待遇だけでなく、業務内容や職場環境の改善も、これまで以上に進んでいくことでしょう。