平成20年に厚生労働省が発表した「平成20年賃金構造基本統計調査」によると介護業界の男女比率はホームヘルパーで男性16.2%、女性83.8%、施設介護職員で男性31.4%、女性68.6%となっています。
ホームヘルパーでは女性が8割を占め、施設介護でもまだ女性の方が多めな印象ですが、どうしてこのような男女比率となっているのでしょうか?理由と今後の展望について考えてみました。
厚生労働省が令和元年に公表した簡易生命表によると、平成19年の男性の平均寿命は男性81.25才、女性87.32才で過去最高記録を更新したそうです。
このことを踏まえて考えてみてください。皆さんは施設や居宅介護を利用されるご利用者様の顔ぶれを考えると、何となく女性の方が多い印象はありませんか?平均寿命で6才も男女差があるとなるとこの印象にも納得がいくはずです。
この利用者様に女性が多いということと、「同性介護の原則」が尊重されるようになってきたため介護業界には女性が多いのです。
同性介護の原則とは、本来介護サービスの提供は利用者と同性の介護士が行うことが望ましい、という考え方のことを言います。ご利用者様の立場で考えれば、排泄、入浴の介助を積極的に異性にしてほしいという方はおそらくあまりいないのではないでしょうか。
むしろプライバシーを尊重してもらえないと悲しい気持ちになる方もいらっしゃるはずです。
また介護士の立場からの事例もご紹介します。
高校を卒業し19才で施設介護職員となった女性介護士さんがお二人いらっしゃいましたが、その方たちは「誰とも付き合った経験がない」と公言していたにもかかわらず、男性利用者の排泄介助、入浴介助を当然のようにしなければなりませんでした。
このような場合、もし自分が二人の女性の親の立場ならばこの仕事を娘に積極的にさせたいと思うでしょうか。
性別が逆でも同じことです。現在の介護保険制度の中では「同性介護の原則」は完全に行おうとするとまだ難しい面があります。
例えば機械浴時の介助などは力の面で男性介護士が有利な面があったり、夜勤帯で男女両方の介護士を常勤させることが金銭的に難しい面があったりするからです。
しかし「同性介護の原則」を尊重する意識が少しずつ高まってきている今、男性介護士、女性介護士両方の力が介護現場では必要とされています。
幸いにして現在まだ介護業界は過渡期で、制度も現場の意識も改革の余地がたくさん残されています。皆で力を合わせてよりよい同性介護が実現できるといいですね。