「介護業界は人材不足」。耳にタコができるくらい聞いている言葉です。いったい介護業界には何が起きているというのでしょう?
介護士の人材不足について、実態をご紹介するとともに、原因を探ります。
人材不足といっても、どの程度の不足があるのでしょうか?
公益財団法人介護労働安定センターによるアンケート調査「介護労働実態調査(平成29年度)」では、66.6%の介護施設・事業所で「介護職員の不足を感じている」ことが示されました。
また、経産省の試算では、2035年には約79万人の介護人材が不足するだろうと発表されています(2018年5月時点)。
現場の介護職員を対象に行われた民間のアンケート調査では、97.5%の人が「自分の職場で人材不足を感じる」と回答しているものまであります。
現場の職員の実感としては、すでにどこもかしこも人材不足というのが実態と考えてよいのかもしれません。
それでは、その人材不足はどこから来ているのか。根本的な理由は、やはり「高齢化」にあるという点は間違いないでしょう。
「高齢化」については、総人口における65歳以上人口の割合を「高齢化率」として、その割合によって、その社会の状態を言い表す表現をWHO(世界保健機関)が定義しています。
日本が「高齢化社会」(高齢化率7%以上)に突入したのは1970年のこと。それからわずか24年で「高齢社会」(高齢化率14%以上)となりました。
「高齢化」先進国のドイツでも42年かかっているところを24年ですから、世界に類をみないほどの驚くべきスピードです。
さらに、内閣府の調査「高齢社会白書」では、日本の総人口は1億2,671万人、65歳以上人口は3,515万人(平成29年度)。
したがって、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は27.7%と、WHOが定義している「超高齢社会」(高齢化率21%以上)に、とうの昔に突入してしまっています。
また、同年の総人口に占める15歳以下人口は12.3%。65歳以上人口の27.7%と比較してみると、「少子化」も明らかです。
日本は、2008年に始まったEPA(経済連携協定)の枠組みで、これまでにインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国から介護士を目指す研修生を3,000名以上受け入れています。
しかし、言葉の壁など多くの課題があり、この制度を利用した研修生の介護福祉士合格率は50%程度。不合格の結果を受けて帰国する人も多く、また、たとえ合格しても、ホームシックや家庭の事情などで帰国してしまうこともあるそうです。
2000年代初めから積極的に外国人労働者を受け入れてきたドイツにおいても、十分に人材が定着しているとはいえず、介護の人材不足解消には至っていないといいます。
ドイツの介護人材不足の背景には、慢性的な人材不足による「労働環境の過酷さ」や「賃金の低さ」などの問題がみられます。平均賃金に対し、専門介護士(3年間の養成教育を受けて取得する国家資格)の賃金は4割ほど低いということです。
日本にも同じ問題があることは否めません。先ほどの介護現場の職員へのアンケート調査でも、6割以上が「業務量が多い」「休みがとれない」と回答しています。また、「給与の低さ」を人材不足の一因と考えている人が半数以上です。
同調査で、人材不足を解消するための方法としては、介護職の「社会的地位の向上」を唱える声が多くあがっています。
高齢化した社会では、「介護職の人材不足」が頭痛のタネであることに間違いありません。それをどのように解消していくか、社会ぐるみで考えていく必要があるでしょう。